これについては、矢野道雄『星占いの文化交流史』pp.44-50に、下記のような経緯が説明されています。
1) ヘレニズム時代に惑星を遠い順に並べる方法が行われていた。
2) 会合周期の観測により紀元前一世紀ころに、その順序が 土木火日金水月 と定まった。
3) その直後、プトレマイオス朝エジプト(*)で、この順序を24時間に 順に配当し、午前0時に配当された惑星がその日全体を支配する という考え方が現れた。結果、前記の順を3つ(**)ずつとばして 土日月火水木金 という順序が使われるようになった。 (*) ヘレニズム時代 (**)24 ÷ 7 = 3 あまり 3 の「あまり 3」による
4) この順序が記録にあらわれるのは紀元前後からである。
5) 西暦紀元元年1月1日が土曜日なのは土曜日が最初という意識による(?) のかもしれない(矢野さんの推測)
ただし、
1) についてヘレニズム時代の人はバビロニア起源と考えていた。
3) のロジックはカシウス(紀元160年ころ生まれ)『ローマ史』にある方法のひとつ ( → 曜日の順序とピタゴラス音律 )
3つずつとばす理由として、カシウス説では、 ・惑星が支配する時間 ・ピタゴラス音階の完全四度の間隔 の2説が併記されている。
5) の西暦紀元の定義は6世紀ころのこと。
という注記を補っておきましょう。
アブラハムの宗教の七日周期とは独立に成立したものであることは押さえておきたいです。
つまり、どの日が何曜日かは周期の長さが偶々同期したため結果的に配当されたといういきさつと解釈できます。
七曜は循環しますから、その循環順序が決まっただけでは週の初めが何曜日かは定まりません。
そこでいくつかの流儀が考えられます。
惑星が支配する時間なのか完全四度の間隔なのか何れの解釈でも、最も遠い惑星に由来する土曜日を最初とするのが自然です。
概して日曜日を週の初めとしているようです。
神が天地万物を完成して休んだ土曜日を七曜の最後とするのが自然です。そうすると日曜日が七曜の最初になります。
イエスの復活は週の初めの日だったという記述が福音書(マタイ28章,マルコ16章,ルカ24章,ヨハネ20章)にあります。
例えばマルコ16章9節
週の初めの日の朝早く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤにご自身をあらわされた。
ユダヤ教の伝統に従って日曜日が七曜の最初ですから、数えて3日前に当たる金曜日が磔の日になるわけです。
つまり、「復活の日だから安息日」ではあっても、「復活の日だから週の初めになった」という因果関係ではない。
イスラム教の集団礼拝日は金曜日ですが、現地のカレンダーの例(サウジ・アラビア)を見ると
のように右から左に向かって 日曜 … 金曜 土曜 となっており、必ずしも金曜日が週末・週初というわけではないようです。
(ただし曜日の名前のはなしによればスワヒリ語で金曜日始まりの例がある由)
日付表記法に関する国際規格 ISO8601 では週の初めを月曜日としています。
規格の制定に熱心なヨーロッパの国々では、実用的な見地から仕事初めにあたる月曜日を週の初めとして扱う傾向がもともとあったようです。
月曜日を週の初めとするカレンダーは最近では日本でも見かけるようになってきました。
こうしてみると「カレンダーは日曜日を週の初めとしている」ということ自体が必ずしも言えないことがわかります。
2012-01-28 | ISO8601暦週 |
2012-10-04 | 休日の由来 |
2015-05-28 | 七曜の連続性 |
2016-12-08 | Hanke-Henry Calendar 改訂 |
2017-01-18 | 週の始め |
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